BTS、RM負傷でも揺るがず “帰還を超えた進化”を刻んだカムバックライブ
(c)AFP = K Sideそれは、“帰還”ではなく、静かな進化だった。3月20日、『The 5th Album「ARIRANG」』をリリースしたBTS。翌21日には、韓国・ソウルの光化門(クァンファムン)広場で、カムバックライブ「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」を開催した。本公演は、Netflixで世界同時に視聴可能な無料ライブ。まさに“開かれたカムバック”という、新たな時代を象徴する一夜となった。(c)AFP = K Side幕開けは、アルバムの1曲目『Body to Body』。センターに立つリーダーのRMが、静かに、しかし確かな存在感で声を放つ。RMは2日前のリハーサルで足首を負傷し、一部パフォーマンスを制限した状態での出演となった。時折、ステージ脇で椅子に座りながら踊る姿に観客はどこか気がかりになりながら、同時にその覚悟を強く感じさせるものだった。そんなRMを他のメンバーたちが包み込むように、パフォーマンスの密度を引き上げていく。ポジションが不在であっても、その場所を無理に埋めるのではなく、あたかもそこにいるかのように成立させる——。それもまた、BTSの強さだ。完璧ではないからこそ生まれる“余白”が、かえって感情を揺さぶる。アーミーの間では、「それがむしろエモーショナルだった」と語られている。 (c)AFP = K Sideタイトルにも掲げられた『アリラン』は、韓国を代表する民謡。長い歴史の中で歌い継がれてきたこの曲は、離別や郷愁、時代の苦難を内包しながら、民族の記憶と深く結びついてきた曲でもあるが、その旋律をモチーフにした本作には、BTSの“次章”への意志が織り込まれている。 アルバム全体についても、「より成熟したトーン」「J-HOPEの持つヒップホップの感性が色濃く反映されている」「RMのクリエイティブの核心に迫っている」といった声が上がる。 RM自身も、「どのような選択をすべきか、どんなアーティストであるべきかを問い続けてきました。答えは外ではなく、自分の中にあった。だからこそ、自分の心の声に耳を傾けて、悩みや不安も含めてすべてを詰め込んだ」と、本作に込めた思いを語っている。 タイトル曲『SWIM』もまた印象的だ。「一見すると物足りなく感じるかもしれない。でも、人生の荒波を淡々と泳いでいくように、聴き込むほどに深みが増す楽曲」とメンバーが紹介するこの曲は、派手さではなく“余韻”で残る。聴けば聴くほど、まさに中毒になっていく楽曲である。 さらに、兵役期間中もトレーニングを重ねてきたジョングクやVの高音域の進化、歌唱表現の変化がその“実力”の積み重ねを感じさせた。 (c)AFP = K Sideライブでは、『Dynamite』『Butter』『MIC Drop』、そしてアンコールや終盤の定番『Mikrokosmos』なども披露。世界へと扉を開いた楽曲たちが、いま再びこの場所で鳴らされる意味。会場に集まったファンだけでなく、Netflixを通して世界中で見守るオーディエンスの熱狂が、その場の空気を確かに震わせていたはずだ。(c)AFP = K Side 「少し大人っぽくなったBTSを見せたい」。メンバーが語っていた通り、この日のステージは、研ぎ澄まされるほどの色気があった。それでいてデビュー当時の、幼いほどに仲良しな雰囲気も残している。ステージで思わずVがジミンの手をつないでしまうぐらいに——。そして何より印象的だったのは、その“変化の美しさ”だ。転役直後、どこかふくよかな印象を残していたRM、ジョングク、V、ジミンが、まるで天使の魔法に導かれたかのように、引き締まり、透明感を増していた。その姿は単なる変化ではなく、“再生”にも似た輝きを放っていた。BTSは、戻ってきたのではない。時間ごと、美しく塗り替えてきたのだ。その事実をくっきりと印象づける一夜だった。(c)AFP = K Side文=Ikushima Maki(c) K Side